天使の翼 悪魔の影35

ようなことはそんなにしていない。同僚のボールペンを捨ててしまったくらいだ。そのくらいの事、別に良いじゃない、と許す人も多いだろう。しかし問題はそのうすーく汚れた心のようだ。ハッキリとした怒りのほうがまだマシ、という時もあるのかもしれない。

ボールペンを捨てたことより、そのことで困っている同僚に対してほくそ笑む心。それこそが悪魔と波長があってしまった原因かもしれないのだ。

そしてここにまた悪魔と波長があってしまった男がいた。

「どうしてー?どうしてー?!」ある携帯ショップ。がっしりとした男が執拗に店員に詰め寄っている。男はハンチングの帽子をかぶっていた。説明がよくわからなかったらしい。たったそれだけのことなのだが、彼は馬鹿にされた、と認識しているようだ。

「笑いやがって・・・」店員の笑顔が気に食わなかったようだ。

「どうしてー?」男は繰り返す。困った店員は他の店員に助けを求めた。違う店員がまた謝罪しやっと男は去っていった。しかし最後まで怒ったままだ。

・・・いた・・これなら干渉できそうだ・・・悪魔はほくそ笑んだ。この男にカイトを殺させよう。悪魔は語りかけた。まずは刃物の調達だ。それは家にある包丁でいい。

・・・家に帰って包丁を用意するのだ。カバンにそれを入れろ・・・悪魔は念を送った。

「ちくしょう・・・なんかスゲームカムカする・・・」岡田の心の中に理由もわからない怒りが膨らんでいく。次から次へ過去のムカつくことが思いだされた。

・・・・家に帰って包丁を・・・・悪魔はしつこい。何度もその想念を岡田に発信し続けた。しかし彼はそのまま家に帰らずとあるショッピングモールに向かった。

・・・ダメだ。上手く干渉できない・・・

想念を送り続けて4日経った頃だった。インクブスはあいも変わらず・・・包丁を・・・とやっている。

その時、友人の相葉から電話があった。あのカイトの撮影をした相葉である。

「ひまじゃねえ?どっかいかねえ?」と相葉。

携帯の向こうから岡田の無気力な声が聞こえて来た。「まあ・・いいけど・・・」岡田は今悪魔からの干渉で情緒が不安定だ。

「車でお前ん家行くよ。」と相葉。

「ああ・・」電話はそれで切れた。今の岡田は非常に危険だ。僅かなことでも殴りかかってしまうだろう。


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