月: 2026年3月

  • 小説 アルテミス7

    「非音声通信で話さないで、私が分からないわ。」これはミンチン博士。無言のまま一定時間佇んでいるのを見て、非音声通信をしているとミンチン博士は気づいたのだ。

    「そうね。声で話すわ。今日は何をするの? 」アルテミスは言った。念動力の精度を上げるための訓練。三人の精度はかなり高い、だが、動かそうとする物とは、違うところに焦点が当たってしまうことが時々ある。それでは兵器としては役に立たない。

    「さっきリクト凄かったわね。あんなに重いものを持ち上げてた。何キロくらいあるのかしら」とアルテミス。

    「分かんねえ。でも2~30キロはあるんじゃねえの?」リクトは何てことはない風で言った。

    「そんなに重たいやつを?僕もやってみようかな。」タカシが言った。そしてリクトが持ち上げていた金属片に意識を当てた。ゆっくりと金属片は空中に浮かび上がった。

    「かなり・・疲れる・・・でも・・なんとかなる。」とタカシ。

    「お、できんじゃん。タカシ結構、力が強くなってんな」リクトは言った。この三人の中では一番力が弱いのはタカシだ。でもそんなタカシをリクトは見下すでもない。

    「まあ凄いわ。タカシの力も強まっているじゃない!」ミンチン博士が言った。

    ミンチン博士は母親のようだ。

    この力を自分に向けられたらどうなるのか?そんなことは考えてもいない。他の職員達はどう思っているのだろう?科学にとりつかれて、そんな発想などないのだろうか?

    小惑星帯にある植民島。巨大なドーナツ型密閉空間の中に数万人が暮らしている。周りの数百万キロには他の植民島はない。火星連邦の為の資源採掘の拠点。大部分がロボットによる採掘だが、主にそのロボットのメンテナスのために人間はいる。一応火星連邦の支

  • 小説 アルテミス6

    に、たむろっているような連中には人権など認めない、といった空気が優勢になってしまっている。ヨシュアも罪を認めない限り、かなり殴られるだろう。

     

    目の前に浮かぶコップ。アルテミスは何を飲もうかと迷っている。ここは月面にある施設の彼女の部屋。扱いは結構良い。彼女はやっと実験に成功した完成品なのだ。表面上は大切に扱われている。

    部屋には様々な飲み物が用意されていた。ホテルのスイートルームのようだ。

    アルテミスは、この窓を割ったら、私どうなるのかしら?そんなことを考えてしまう。まあ、その時はすぐ、自分の周りに空気を留めるけれど。

    「あまり考えすぎない方が良いわね。割っちゃいそう・・・」その証拠に窓ガラスは少し振動し始めている。彼女はかなり正確に力をコントロール出来る。少し考えた位では勝手に物を壊したりはしない。しかし、あまりにも感情的になると制御できなくなる時もある。

    「もっと訓練しなきゃ」彼女は独り言を言った。

    その時部屋のベルが鳴った。ドアを開けるとそこにはタカシがいた。「行こうよ。練習」

    「もうそんな時間?分かったわ。ちょっと面倒くさいけど行かなきゃね。」アルテミスは言った。

    だだっ広い格納庫のような場所。リクトは既に、そこにいて金属の破片を弄んでいた。

    (遅くねえ?)リクトは言葉を使わず二人に語りかけた。金属片をゆっくりとアルテミスたちとの間に移動させる。

    (そんなに遅れてないわよ。それにリクト、遊んでたんでしょう?)とアルテミス。

    Saint Laurent(サンローラン)