アルテミス31

ソファに持たれて紙の本を読んでいるハッデン。

「またその本を読んでいらっしゃるのですね。」複数あるオリオンの端末は言った。

「何か悪いのかね?」もちろんハッデンは意地悪で言ったのではない、好意的な気持ちでそう言ったのだ。「悪くはありません。本当にお好きなのだな、と思ったので。」とオリオン。

その本は年代物の「キリストにならいて」だ。

「紙の本が好きなのは・・お前も知ってるね。私はどうもタブレットで本を読む気にはならない。他の人は2百年もそうしているのに」ハッデンは言った。

「好みはそれぞれです。善悪の問題ではありません。ただ少数派ではあるでしょうね。・・・ハッデン様・・もうすぐドッキングです。」

       

ハッデン私設工場

巨大な構造物。全長およそ二キロ程だろうか。工場や研究施設、居住区を備えている。ここで新しい戦艦が作られていた。回転する車輪のようなものが居住区や研究のための施設。

作る側の工場と、ほぼ同じ大きさの新しい船。「もうすぐ完成ですね。これはアルテミス達の船ですか?」オリオンは言った。

この船の核心部分・・重力制御はオリオンの発明だ。彼の思考の速度だと、1分は人間の1年に相当する。1分あれば人間が思考する1年分の思考を巡らせることができるのだ。

実際の実験が全くいらない、とまではいかないが、頭の中の実験で大部分は済んでしまった。本物の実験は、どうしても必要と思える時だけ行った。

「お前は天才だよ。オリオン。お前がいなかったら重力制御など夢でしかなかった。」ハッデンは言った。

「ハッデン様の発想も必要でした。これはお世辞ではなく、流石、私を生み出した方です。」オリオンはなぜか誇らしげ。

「久しぶりだわ。楽しみ」アルテミスは言った。

「まだ月で会ってから、そんな時間経ってないよ?まあ、キミはお気に入りだからね、ハッデンさんの。」とタカシ。

3人と施設の職員が何人かでハッデンを迎えに来ている。

「あなただってハッデンさんのお気に入りよ!何言ってんのよ。」ハッデンに呼ばれて、月から小惑星帯に移動していたアルテミス達。

ドアが開き、ゆっくりとハッデンとオリオン(の端末)が歩いてくる。(ややこしいようだがオリオンの本体はハッデンの植民島にある。)

スムースにハッデンたちに近づくアルテミス。彼女はそのまま念動力で移動しているのだ。ハッデン達は磁力で床にくっつく靴で歩いているため、彼らの体は歩くたび揺れてしまう。「重力制御装置もっと小型化できれば良いのに」アルテミスは言った。

「それはまだ先ですよ。でも研究はしています。」オリオンは言った。アルテミスの船の全長は2キロを少し超えるくらい。巨大な粒子加速器を積んでいるため、SF映画などでよく見る円盤型。円盤の外周がそのまま粒子加速器になっているのだ。

「船の名前は何ていうの?」アルテミスは内心では自分が付けたいのだが、一応聞いて

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