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  • 小説 アルテミス6

    に、たむろっているような連中には人権など認めない、といった空気が優勢になってしまっている。ヨシュアも罪を認めない限り、かなり殴られるだろう。

     

    目の前に浮かぶコップ。アルテミスは何を飲もうかと迷っている。ここは月面にある施設の彼女の部屋。扱いは結構良い。彼女はやっと実験に成功した完成品なのだ。表面上は大切に扱われている。

    部屋には様々な飲み物が用意されていた。ホテルのスイートルームのようだ。

    アルテミスは、この窓を割ったら、私どうなるのかしら?そんなことを考えてしまう。まあ、その時はすぐ、自分の周りに空気を留めるけれど。

    「あまり考えすぎない方が良いわね。割っちゃいそう・・・」その証拠に窓ガラスは少し振動し始めている。彼女はかなり正確に力をコントロール出来る。少し考えた位では勝手に物を壊したりはしない。しかし、あまりにも感情的になると制御できなくなる時もある。

    「もっと訓練しなきゃ」彼女は独り言を言った。

    その時部屋のベルが鳴った。ドアを開けるとそこにはタカシがいた。「行こうよ。練習」

    「もうそんな時間?分かったわ。ちょっと面倒くさいけど行かなきゃね。」アルテミスは言った。

    だだっ広い格納庫のような場所。リクトは既に、そこにいて金属の破片を弄んでいた。

    (遅くねえ?)リクトは言葉を使わず二人に語りかけた。金属片をゆっくりとアルテミスたちとの間に移動させる。

    (そんなに遅れてないわよ。それにリクト、遊んでたんでしょう?)とアルテミス。

    Saint Laurent(サンローラン)


  • 小説 アルテミス2

    「よっ、オリオン元気そうじゃん。」こう言ったのはリクト。ニヤニヤしている。何がおかしいのだろう?

    「ごきげんよう、リクト。あなたも元気そうですね。」アルテミスに抱きつかれながらも微動だにせず、顔だけリクトの方に向けてオリオンは言った。

    「こんにちはタカシ。あなたもお元気そうで良かった。」とオリオン。

    「ありがとオリオン。僕も会いたかった。」タカシは静かに言った。

    彼らは特別な絆で結ばれているようだ。少なくともタカシはそう思っていた。

    例え、どんなに笑顔で話せていたとしても、力を持たない人間達との関係を、タカシはどこか違うと思ってしまう。そして何より、力を持たない人間達もそう思っているのだ、そう感じているのだと。彼はその思いを払拭できない。

    アルテミスは黒い炭酸飲料を飲んでいる。未だにあるのだ。不変の飲みもの。

    部屋にある大きな窓からは、ずっと続く月面と星。本当に美しい、アルテミスは思った。大きなテーブルの向かいにはリクトとタカシ。

    「座らないの?いつも座らないけど?」アルテミスは言った。オリオンは人間の様に疲れたりはしない。しかしアルテミスがそう言うなら、とオリオンはゆっくりと腰掛けた。

    「私は疲れませんよ?それに執事は座らないものでは?」その言葉にアルテミスは驚いたように言った「あなたは友達よ。他の人より遥かに・・」

    アルテミスもタカシ達も、決して人間に心を許してはいない。少しでも関係が悪くなれば、化物扱いされてしまうのだ、心の底でそう思っていた。

  • 小説 アルテミス 1

    小説 アルテミス 1

    ツィオルコフスキー月面基地にて

    月の女神・・・その矢に疫病を載せて人を殺す。

    「この船は月へ向かってるのよね?」とアルテミスは言った。

    「そうよ。知ってるじゃない?気になることでもあるの?」彼女たちの子守役(監視役?)のミンチン博士は言った。彼女はアルテミスを造った研究のリーダー。

    「いいえ。何となく、不思議な感じがしただけよ。だって私の名前って月の女神の名前でしょう?そこに行くのね」アルテミスは言った。

    「綺麗な名前だよね。アルテミスって・・」その様子を見ていたタカシはうっとりするように言った。彼はアルテミスのことが少し、好きみたいだ。「そう?ありがとう。実はね、私も気に入っているのよ。」とアルテミス。

    「今日はアルテミス達が月に到着する日ですね。」オリオンの声は心なしか嬉しそうだ。

    「君たちは仲がいいね。ああいう力を持っている人間は、同じ人間よりもコンピュータが好きなのかな?」若い科学者は言った。

    彼に悪気などはない。しかし少しだけだが、力を持つ子供達に対する侮りのようなものをオリオンは感じ取った。

    「久しぶりー。オリオン。寂しかったわー」オリオンに駆け寄るアルテミス。

    本体のコンピュータは大きすぎて人のサイズには収まらない。だからここにいるのはオリオンの端末のロボット。