
「・・・やっぱ盗みか・・・あんまやりたくねえな・・・」
「・・・でも、どうすることもできないしねえ・・・あ、日本銀行からとっちゃえば?・・」
「・・・すぐわかるだろう??それ。」
「でも僕たちだってことは分からない・・」
「そうだけどさ・・・・大騒ぎになるぜ?政府内で。で俺らの力のことは知らなくても、あんな金庫から証拠も残さず盗めるのって、俺に関係する何かだって思われねえ?」
「わかりゃしないよ。だって僕の力のことは知らない筈。・・・それかさ、政治家は?
結構現金を隠してそうだ。それを少しもらおう・・・湯沢・・・あいつから・・・もらおうよ。早速行く?」二人は楽しい気持ちになっていた。
盗みを正当化は出来ないだろうが、湯沢はカイトを殺そうとしたのだ。そいつから、お金を盗むことに復讐の喜びを感じていた。おまけに殺さないでおいてあげるのだから・・・そんな風にも思っていた。
カイトは別荘から湯沢の家に飛んでいる。別荘は富士山近辺の湖のすぐそばにあった。
「・・・二百キロくらいかな・・・そのくらいなら飛べるようになったね、僕たち・・。融合ってすげえな・・・こんなに力が強まるなんて・・・」会話が融合によって混じってきていた。
首相官邸に湯沢はいた。まだ仕事があるようだが。カモフラージュしたままカイトは彼を透視している。
「・・・まだ家には帰らないんだな・・・」あたりはすっかり夜だ。
「・・・いろいろ面倒なことをしてるねえ・・・家に現金としてあるといいんだけど・・」
「・・・スマホがあれば家がわかるんじゃねえの?・・・」
「・・首相の家?実家ってこと?」
首相は名家と言われる家の出だ。家もニュースで見たことがある。
「じゃあスマホ拝借しようか・・・ちょっと試してみたいこともあるしね・・」
ヨシヒロは湯沢首相の服を透視した。上着が透けてみえる。そしてシャツ、皮膚を通り越して内臓・・がうっすら透けて見えた。
「・・スマホ発見。持ったまま仕事してる・・・いいのかな?」
「・・・いいんじゃねえの?別に・・・そっか・・別にいいのか・・・」ヨシヒロはスマホを目の前の空間に出現させようと意識した。スマホがゆっくりと現れ始めた。まだどちらの空間にも存在している状態だ。
そしてある瞬間。ヨシヒロの目の前に存在が確定した。質量が完全に移動し、静かな状態なら湯沢首相はわずかに上着が軽くなったことを感じたはずだった。しかし何やら真剣に話をしている首相は気づかない。
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