「日本政府からの情報はまだないのですか?」エリザベス大統領は言った。日本軍が偵察機を飛ばしたが怪物は到着前に太平洋に向かってしまったのだ。今あるのは監視衛星の映像だけ。
「怪物、太平洋でました。東へに向かっています」
エリザベスは嫌な予感がした。まっすぐに行けばアメリカなのだ。
「湯沢首相から通信が入っています。」秘書官が言った。
「エリザベス・・・怪物はそちらに向かっているかもしれません。」テレビ画面に映る湯沢首相。
「ええ・・・そうですね。すでに迎撃するために戦闘機が向かっています。」とエリザベス大統領は言った。
「戦闘機など・・効きませんよ。水爆を使うべきです」と湯沢首相。
「水爆・・・しかし放射能汚染が・・・」湯沢と違いエリザベスは躊躇していた。
「しかし、今なら太平洋上で迎え打てるかもしれませんよ。」湯沢首相は言った。
「そうですね・・今なら。」エリザベス大統領は躊躇しつつも水爆攻撃に傾いていた。
早速、怪物はキャスリーンと命名された。エリザベス大統領が命名したのだ。
「キャスリーンは時速600キロほどでアメリカ本土へ向かっています。」別の大きなテレビ画面にはキャスリーンを示す点が太平洋を横切っているのが映しだされている。
太平洋に出たキャスリーンはタコのような触手を四方へ広げ、淡く光る球をいくつも発射した。高速で四方へ散ってゆく光球。アメリカや中国、ロシアにもその光球は到達した。シベリアの地面に接したとたん。大爆発が起こった。小型の原爆どころではない。水爆のような爆発が起こった。大部分は人口密度の低いところに落ちたが、いくつかは大都市の近くに落ち、数百万人が爆発で死亡した。
「モスクワ近郊にキャスリーンから発射された光球が落下した模様です。」アメリカの監視衛星が巨大なキノコ雲を上から映し出している。そのアメリカも無事ではなかった。なんとエリザベスのいるワシントンを直撃したのだ。
湯沢首相がエリザベス大統領と話していると突然画面が消えた。
「何があったんだ!通信が途絶えたぞ!」またどなる湯沢。
「分かりません。原因を調べます」広い首相官邸の司令室の中では突然の回線切断に右往左往している。
初めのうちは全くわからなかった。当のアメリカさえ自体を把握してはいないのだから。
しかし日本の監視衛星がキャスリーンからの光球がワシントンに落ちた場面を捉えていた。
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