天使の翼 悪魔の影89

カイトはヨシヒロの死を悼む気持ちが薄れてゆくのを感じた。確実に会えるのだ。それが分かったから。

「・・・そっか・・・確実に会えるんだ・・・向こうの世界があるのは確実じゃん・・」

天使に悪魔。そして自分の変身に、どうやら神までいるらしい。しばらくの間、人間にとっては長いだろうが、後30年か40年か・・・早死すればもっと早くヨシヒロに会えるのだ。確かに人間の尺度ではとんでもない年数だ。しかし例えば、太陽の寿命などと比べれば一瞬だろう。

悪魔たちはしつこくロシアの指導者を誘惑していた。今度はロシアにカイトを攻撃させる気でいるのだ。

「・・・ダメだ・・・どの武器も通じないことがあまりにもはっきりしてしまって、歯止めがかかってしまう・・・」悪魔は八方塞がりになった。もはや人を怪物にもできない。

ある程度、悪意は育った。しかし気持ちだけではどうにもならない。カイトに有効な武器がなければ。

・・・あの力の根源はなんなのだ?・・・どうしてカイトはあれほど強いのか、悪魔はまだそれに気づいていない。悪魔の本領ともいえる人類の怨念が、その原因の一つであることに。その時、リリスが言った。

「・・・憎しみとか怒りとか・・それが根源なんじゃあ?・・・」

「・・・!怒り??・・・何故そう思う?・・・」悪魔は尋ねた。

「・・・だって短期的にはとても強い力じゃない?・・自分も壊すけど・。・それにあなたの本領じゃない?どうしてそうは思わなかったの?・・・カイトは愛に満ちた聖人じゃないわ。普通の煩悩を抱えた人類の一人よ。そして精神的な面でだけなら、強い怒りを抱えてる。だからそう思ったの。・・・・」

「・・・そうか!・・」悪魔は笑った。

「・・そうだよ!何故気づかなかったのだろう???・・・不思議だ・・・」

「・・・だから仲間が必要なのよ・・・あなた一人なら気づかないままだったかもよ?・・」

リリスが得意げに言った。

「・・・きっと人間の怨念、怒りを根源としているのだ!私の本領・・憎しみを。・・・しかし・・今それが分かってもどうしようもない・・もはや力は使い果たしてしまった・・・」

「・・・私たちも協力すればなんとかならないかしら?・・」

「違う悪魔の力を合わせるのは、したことがない・・うまくいくだろうか?・・・」悪魔は不安げに言った。

「・・・何を恐れるの?別に失敗したって大丈夫なんじゃない?ただ、できないだけの事、じゃないのかしら?・・・」

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