母親は台所をウロウロし始めた。頭の中にはカイトが言った腹立たしいこと、嫌な態度、それらばかりが浮かんだ。もう抑えられない。今やらなければ。いてもたってもらいられない。
母親はもういちど包丁を取り出した。そのまま静かにカイトのいる部屋へ向かった。
カイトは寝ていた。一晩中ゲームをしていたためだ。静かに階段を上る母親。しかしドアには鍵がかかっていた。
・・・しまった!・・・鍵が・・・。窓に回るのだ!・・窓に!気づかれてはならない・・
母親は力いっぱい鍵を破壊しようとしたが思いとどまり、隣の部屋の窓に向かった。
隣の窓からのそのそと出て行く母親。
果たして、カイトの部屋の窓は開いているのか?・・窓の鍵は空いていた。
一階の屋根を伝い、のそりとカイトの部屋の窓を乗り越え、部屋に入った。服が擦れる音や、床に足がつく音がしたが熟睡するカイトは気づかない。そして布団を持ち上げ包丁を突き刺した。
ビクッと起きるカイト。激痛のある方を見ると母親が包丁を突き立てている。しかしそれまでだった。カイトは光に包まれ、周りを吹き飛ばし変身した。
「・・・あ、起動しちゃいましたね。非常スイッチ・・・」とガブリエル。天使達はカイトを見守っていた。一応は悪魔の、母親への干渉を邪魔しようとしていたが、できなかったのだ。爆発で母親は死亡し、まわりの家も数件吹き飛ばされた。
「なんだ!どうした!いってええ!」カイトは激痛が走ったところを見た。しかし今は何もない。
「いたくねえ・・・・」記憶に残っているのは母親が自分に包丁を突き立てている光景だ。そして周りの光。周りを見渡すと、人々が呆然とカイトを見上げていた。
・・・やべえ・・・バレた!・・・すぐにカイトは飛び去った。
・・家も吹き飛んじまった・・それに俺があいつを殺したことになるのか?・・・ずっと変身したままじゃなきゃ生きていくのも大変かもしれない・・・
「ヨシヒロ・・・って携帯ねえしなあ・・・」空を飛びながらカイトは言った。あまり独り言は好きではないが、今はつい出てしまった。落ち込むと出る。カイトは今無一文だ。自宅から離れたところで変身を解いてもどるしかない。交通費はないのだ。彼は上空から降りられそうな場所を探した。しかし、真昼間だ。四十メートルの怪人が
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