人を跳ね飛ばし、そのまま電柱に衝突した。シートベルトをしていなかった彼は即死だった。
・・仕方ない・・・次の標的は・・・
悪魔はあっさりと岡田を捨てた。関心はもう次の人間へむかっていた。
犯罪現場の騒乱をよそに悪魔はさまよう。
・・・カイトめ・・
強い憎しみのせいで悪魔は瞬時にカイトの家に移動していた。
「ホントに情けない穀潰しだね!このカイショなしが!」カイトの母親の罵声が響く。
・・・!これは!・・
「うるせえんだよ。てめえのせいだろうが」カイトはかなり補足説明が必要なことを言った。
「人のせいにするもんじゃないよー!!ほんとにダメなコだねえ。あーみっともないみっともない」嘲笑うような態度の母親。カイトの腹わたは煮えくり返っている。
「ババア!死ね!」カイトはベッドに横になり、そのままイライラしながら母の言葉を反芻していた。カイトの癖だ。そして想像の中で母を殺していた。しかし反面、怖くてそれ以上は言えないのだ。他の人から見たらどうしてそんなに怖いの?と言われてしまう様なおばさんだ。しかしカイトの頭の中では呼吸が止まるほど怖い女でもあるのだ。
・・・これは・・・天使の選んだ人間もひどいものだ。しかし、カイトには干渉できない。
今は母親を使おう・・・
悪魔はカイトを殺すよう母親に囁きかけた。また時間がかかるだろう。しかし悪魔はそんなことは気にしない。
・・・今回は比較的早く効果が出そうだ。・・・
カイトの母親は元々持っているカイトへの怒りが刺激され、台所の包丁に手を伸ばした。包丁を見つめる母親。しかし何かに気がついたようにそれを元にもどした。
・・・どうして辞めるのだ!?・・良心が歯止めをしているのか・・・強烈な憎しみと、殺人への恐れ・・・そして自分がこうありたいという像がこの女を思いとどまらせているのか・・・・人間は複雑だ・・・ではその理想像を変えてしまおう・・・
悪魔は母親が最後の砦としている気高い人間像、そこに手を加えようとした。そうすれば良心と呼ばれているものも崩れるかもしれない。
・・・カイトを殺すのだ・・・
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