「だから怖いよ。手のひらに乗って飛ばれてもさあ」ヨシヒロが言った。
「大丈夫だよ。落ちやしない」しばらくヨシヒロは迷ったが、カイトの手のひらに乗った。
「いいかあ?しゃがんでろよ。今飛ぶから」そう言うとカイトはゆっくりと浮上した。
「うあああ・・怖い・・・」暗い地面が遠ざかってゆく。街道の光もどんどん下に、小さくなってゆく。
「めっちゃめちゃ怖い!」今日は比較的、風はない日だ。しかし命綱もなしに手のひらに乗って飛ぶのはかなり怖いことだった。
「なんて言った?」カイトはよく聞こえなかったので聞き返した。
「めちゃくちゃ怖い!」とヨシヒロ。
「乗り出すなよ。前だけ見てろ。」カイトは言った。
「でも全然風がない。」結構なスピードで飛んでいるのに予想より風がないことにヨシヒロは気づいた。
「だろ?どうやらバリア見たいのがあるんだぜ。そんなに強くねーけど、風くらいは防げるらしい。」カイトは言った。
「へえ・・・」カイトは徐々にスピードを上げ、二人はかなりのスピードで空を飛んでいる。
「それで悪魔ってのはどうなったの?」ヨシヒロは悪魔という言葉が気になっていた。
「あれは・・・それがさー勘違いでさ、天使だってさ。」とカイトは言った。
「あははは」ヨシヒロは笑った。
「何だよ!」むっとするカイト。
「だって今度は天使?じゃあカイトが正義の味方なわけ?」とヨシヒロ。
「てことになるよな」カイトは言った。
「でもさーホントかどうかわからないよ。悪魔も天使の名を騙るらしいしね」ヨシヒロは言った。
「ほんとに?そんなことあんの?」カイトはそういうことには疎い。
「て言うよ。映画とかにもあるじゃん。てか伝説でもそうみたいだよ。タルムード?とかさ」ヨシヒロは心の中では得意になって言った。
「たる?たるむ・?たる?」横文字に弱いカイト。「タルムード。ユダヤ教の・・何て言うか・・口伝えで伝わってきた話を文章にしたものだよ。それだけじゃないよ、何ていうの?一般的な伝説でも、悪魔は狡猾、なものなんだってさ。まあ、そうだよね。大抵東洋でも魔族はずる賢い。要は人間の反映だよね。悪い人はずる賢い。」
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